秋空
取り残された二人で話し合う。

「あの二人変だよね。」

まだ気づいていない愛花が尋ねてくる。

「付き合い始めたみたいだ。」

サラッと言った言葉を聞いた愛花が驚いた。

「えぇぇぇ。何で知ってんの。」

「今日の朝からの言動で何となくわかる。たぶん大会が終わったら、僕たちに打ち明けると思うよ。」

いい加減驚かなくなった愛花が微笑みながら、

「良かったね、あの二人。」

「あぁ、そうだな。」

なんだか恥ずかしくなってくる。

それからあの二人が帰ってくるまで、話すどころか、顔も見れなかった。

「負けてしまいました。」

ひろみの素っ気ない結果報告と

「かなり、惜しかったんだぜ。」

慎也の声は負けたというのにテンションが高い。

相当うかれて、バカがさらにバカになっている。

僕の話を聞いたせいか、愛花もどんな感じになったかわかったようだ。

「次は僕だな。」

すっと、立ち上がってスタスタとコートに入る。

「頑張れよー。」

無駄に声の大きい応援が後ろから聞こえる。

さらに、

「相手は全国出場者だけど負けんなよ。」

(そんな無茶な。)

内心不可能だと思っていたけど、試合が始まるとやっぱり負けたくない。

「がんばって〜。」

何よりも力になる声援が届く。

振り返って力の源を見る。

前の大会が終わってから、僕は愛花を意識するようになっていた。

「かっこいいとこ見せなきゃな。」

小声でつぶやき自分に喝を入れる。

しかし、テニスはそんなに甘いもんじゃない。

予想以上に善戦したが、自力の違いで及ばす負けてしまった。

「悪い、勝てなかった。」

首を横に振り、

「良い試合だったし、格好良かった。」

恥ずかしそうに頬を赤らめている表情にドキッとする。

「じ、じゃあ、みんな終わったし、これからどうするか先生に訊いてくる。」

そう言って走り出す。
< 53 / 88 >

この作品をシェア

pagetop