秋空
「久しぶりだね。」

モデルのような顔立ちと、抜群のスタイルをもつ、まさに美小女と呼ぶにふさわしい女の子が口火を切る。

「あぁ、二年ぶりだな。」

平静を装うのがやっとでまともに言葉を考えられない。

「私、一段とキレイになったでしょ。」

「あぁ、昔は小さかったのに、成長したな。」

里穂は、一歩僕に近寄る。

「私のこと忘れてると思ってた。」

また一歩近寄る。

「そんな訳ないだろ。」

ガシッ

里穂は、俺のからだに抱き付いた。

「祥も、大きくなったね。すごく男らしくなった。」

僕の口はカタカタ震える。

全身が麻痺したように動けない。

「私、この大会が終わったら転校するんだ。」

「そっか。」

なんだかいやな予感がする。

「次は、高ノ宮中学校。」

頭を棍棒で殴られたような衝撃が走る。

背中のゼッケンには、

[高ノ宮中学校 中道 祥]

足が震える。

「また仲良くしてね。それじゃあ、また。」

里穂が離れて去っていく姿を確認すると、足が折れ、その場にへたり込む。

冷や汗がとてつもない勢いで吹き出す。

鼓動も全力疾走の後のように早い。

全力で精神を落ち着け、僕はみんなのもとへと歩き出した。
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