秋空
「それで高木里穂さんってどんな人なの。」

愛花が慎也に問い詰める。

「それを話すのは、祥の許可をもらってからだ。勝手にしゃべっていいことじゃない。」

慎也の表情は相変わらず険しい、愛花もひろみも不安な感じになる。

「祥。」

ようやく帰ってきた僕に、視線が集まる。

「あいつはやっぱり里穂だったのか。」

「あぁ。」

明らかに元気をなくした僕にかけることばを探せなかったのだろう。

だれも口を開かない。

「とりあえず旅館に戻ろう。話はそれからだ。」

僕の呼びかけに首だけで反応した三人は、黙って僕についてきた。


旅館に帰ると、僕たち四人はロビーのソファーに向かい合って座った。

重い空気の中口を開いたのは慎也だった。

「まず、あの女のことについてだけど、名前は、高木里穂おまえら二人が知らないことからわかると思うけど、小学校の時の知り合いだ。」

愛花とひろみは息をのんで聴き入る。

「あいつと出会ったのは小学校六年生の時、父親の仕事で転校してきた。と、言っても、二学期の間だけだったんだけど。」

そこまで話して慎也は一度止まる。
続けるかどうか迷っているようだった。

「続きを聴かせて。」

愛花に促されて慎也はまた語り出す。

「転校してきて一ヶ月がたった時から、二ヶ月の間だけ、一応祥と付き合ってたんだ。」
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