秋空
抱きしめた感触が心地よい。

自分でもなんでこんな大胆なことをしたのかわからない。

女の子独特のいい匂い。

僕の顔に触れる髪。

手に触れる愛花の身体。

お互い、全身で感じる体温。

すべてが僕を高揚させる。

いきなりの出来事に驚いたのだろう。

僕の腕に手を掛けている。

しかしすぐに離れる。

「その根拠って何。」

すでに泣いているのだろうか、僕の手に涙らしき水が落ちてくる。

「ひとつは今までの練習量が人より多かったところ。」

僕は誇らしげに語る。

「確かに、たくさんやったよ。でもそれでも不安なんだもん。」

やっぱり泣いているのだろうか、しゃべり終わると、嗚咽を我慢するような声が聞こえる。

「それで、十分じゃない。」

僕が訊くと、

「十分じゃないよ。みんなには強く映っているかもしれないけど本当は誰よりも臆病なんだよ。」

「あぁ、知ってるよ。」

抱きしめる腕に力が入る。

「前の時みたいに自分のことだけならいいけれど、今回はクラスみんなの分の責任があるんだよ。そんなの抱えきれる訳ないよ。」

愛花の叫びの訴えが耳を刺す。
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