秋空
しばらくの沈黙。

あの時のことでも大丈夫だと思っていた自分が情けない。

まだ僕はわかった気でいたのかもしれない。

後悔が僕の身体を駆け回っている。

そのとき、

「もう一つの根拠って何。」

沈黙を破って愛花が訊いてくる。

「もう一つは・・えーっと・・その。」

愛花が不思議そうな顔をしているのが目に浮かぶ。

「早く答えてよ。」

本当は今すぐに答えたい。

しかしこれを言うとゆうことは、自分の本当の気持ちを・・・つまり好きだと伝えるようなものだ。

(今言うべきなのだろうか。)

合唱コンクールが終わってから言いたかったので、少し迷っている。

「今日じゃなくて明日言いたいんだ。」

と、言うと

「今が言い。」

「うっ。」

当然の答えだ。

「コンクールが終わってから。」

「それじゃ根拠聞く意味ないじゃん。」

クスッとした笑い声の後に矛盾を的確に指摘された。

「えっと、じゃあ。」

心はあたふたしている。

「ふぅ。」

意を決して。

「好きなんだ。」

いきなりのことに驚いたのか、愛花は黙っている。

「根拠は、僕が好きな人なんだぜ。僕が支えるのに失敗する訳ない。」

少しの間沈黙が流れる。

「今言ってくれたこと本当。」

「えっ。」

僕はドキッとする。

「私の事好って言ったこと。」

愛花の耳が赤くなっている。

「本当だよ。僕は愛花が好きだ。」

力を込めて抱きしめる。

「私・・弱くて何にもできないのに。」

「そんな事じゃ、僕が君を好きだと想う気持ちは揺るがないよ。」

すると、

グスッグスン

愛花がいきなり泣き出した。
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