秋空
「えっ、あっ・・」

焦っている僕に、

「祥は、」

今度は愛花が突然言う。

泣きながらの声なので聞き取りづらいが一言一句逃さないように耳に神経を集中させる。

「ケンカしたときも、弱さをを見せたときも、祥は優しく私を包み込んでくれた。」

僕は心臓が止まるぐらい緊張しながら聞き続ける。

「本当は、弱音を吐きたくなかった。またかっこわるいところ見られたくなかったから。不安だったことを隠してるつもりだった。でも、祥を見てたら、隠しちゃ駄目だと思った。私の大切な男の子だから。」

一時のまを置いて、

「嘘をつくと不幸になるって本当かもね。だって、嘘ついてたらお互いの気持ちを知る事はなかったから。」

冷静に考える。

「と言うことは・・」

「好き。祥が大好き。」

嬉しすぎて身体が固まる。

少し間を取り、冷静になろうと思って一旦離れようとすると、

「まって。」

愛花が僕の腕をつかむ。

「ふぇっ。」

突然のことにあたふたする僕に、

「気持ちが落ち着くまでこのままがいい。」

愛花の顔が赤く染まる。

「もっと強く抱きしめてよ。」

そう言いながら、僕の手を握る。

僕は緊張しながらも、もう一度身体を包み込むように細長く繊細な身体をしっかりと抱きしめ続けた。

絶対に離さないように。

さらに力を入れて抱きしめる。

僕の目からも涙が流れ、愛花の首筋に落ちる。

ビクッと揺らせる身体を見て涙を止める。

さっきよりも体温を感じる、そのせいか、顔が火照ってきたようだ。

お互いの暖かさを感じながら時は過ぎていく。

ここは学校、僕たちは少し無防備すぎた。

その光景を眺めている人物がいることに僕たちは気がつかなかった。

その人物は携帯電話をとりだしてどこかに電話をかけた。
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