秋空
音楽室を出たのは七時を過ぎた位だった。

三十分ほど身体を寄せていただろうか。

「コピーは私がするから、先に帰っていいよ。」

「ありがとう。じゃあ、頼む。」

まだ恥ずかしくて、お互いの顔が見れない。

お互いの目が赤いことから泣いていたことがわかる。

僕も泣いた事を悟られたくなかったので、二人で帰るのはいやだったから、ちょうどよかった。

職員室の隣にある印刷室で僕たちは別れた。

「じゃあ、明日。」

「うん、バイバイ。」

お互い顔を合わせることもなく挨拶を交わし、僕は早歩きでも学校を出た。

「顔すら見れないなんて情けねぇな。」

自分のうぶさを責める。

一方の愛花は、

「夜の学校であんな事するなんて、私どうかしてた。」

コピー機のボタンを押しながら、ブツブツ独り言を言っている。

「しかも、もっと強くって・・」

思い出してまた顔が赤くなる。

ガタンガタン

印刷された紙ががどんどんたまっていく。

ピピッ

終了の合図が出た。

紙の束を持って、暗い校舎を進み教室に紙の束を置いて、校舎から出る。

少し離れた自転車小屋に向かおうとすると、

「お前が福井愛花だな。」

突然男の声がするので、声がする方向じっとを見てみると、高校生ぐらいの男が二人立っていた。

「そうですけど何か。」

いかにも不良と言える男二人は、声を掛けた女が愛花とわかるといきなり、襲いかかってきた。
< 70 / 88 >

この作品をシェア

pagetop