恋愛ブランク
「…あー、見ちまった」
今日は先輩達の卒業式だった。まあ先輩達って言っても、そんなに仲が良い先輩なんて居なかったけど。
だけど、先輩達が居ない分、今度は俺らが好きにできる番だし。とりあえず次に俺らが使う教室でも見て回るか、なんてノリで、しかも一人で来たのがまずかった。
「…もう、誰も信用しない…!!」
そんな声が聞こえて、近くの教室を覗き込めば。一人佇む女子が…泣いてる?
卒業式なのに、なんか寂しくて泣いてるっていうより、悲しそう。そして冒頭に戻る。
「うわ…」
黒板に花束をたたき付けると、彼女は床に落ちたそれをしばらくぼうっと見つめてた。
「馬鹿みたい…」
そう言うと彼女は教室から出て行った。間一髪、掃除用具入れの後ろに隠れてバレずに済んだ。けど、ほんとになんなんだろう。
そっと、さっきまで彼女が居た教室に足を踏み入れる。黒板の手前まで進んで、ぐしゃぐしゃになった花束をふと見ると、近くにカードが落ちてた。
「桶川愛子…さん」
なんだか胸がざわついて、何故かあの人の泣き顔が頭から離れなかった。
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