恋愛ブランク





急いでローファーに靴を履き変え、雨が降ってるのも構わずにグラウンドを駆けた。膝に手を付いて、びしょ濡れのジャージ姿の上沢くんに近付く。



「……馬鹿じゃないの?!一週間で変わるわけなんてないじゃない!」


「あ、愛子さん。ちース」


「こんな雨の中、…ただの口約束ごときの為に!」


「…うるさいっスよ。今練習してんだから」



馬鹿みたいに叫ぶ私に動じず、上沢くんはまた走り出そうとする。


私は上沢くんの腕を掴んだ。



「ねえ、愛子さん」


「…………」


「なんでそんな、泣きそうな顔すんの」


「…してない」



雨だ、雨の雫が涙に見えるんだ。私の今のどうしようもない、わからない感情も、彼の視線も、私を泣かせる材料になんてなるわけがないんだから。




< 23 / 24 >

この作品をシェア

pagetop