海と魔物のエトセトラ
2日間の準備期間







店を閉店させたサリマン。


海賊たちは不満げな顔はしていたが、何も言わず店を出て行った。



そして、今、店にいるのは、彼ら5人組とサリマン、そして従業員だけ。







「従業員がいてもいいの?」

「あの子たちの口は堅いから」

「絶対的な信頼を置いてるね」






さりげない会話を、皿を洗い終えたイルアラは樽に座って、盗み聞きしていた。



従業員、皆、盗み聞きしている。


嫌でも聞こえるのだ。







「――で、歌が歌われたって、本当なの?」






イルアラの位置から少し離れたテーブルについて、椅子に座るサリマンが身を乗り出した。



その正面には腕を組んだ船長の男。







「本当だよ。現に、V2が連れてきてくれたし」







――V2[ヴィツ-]とは人だろうか。



ふと、そんなことを考える。



イルアラは昔から頭の回転が以上に早かった。




――月が血に染まった、というのは今日のことだ。



今日は年に一度、夜の明かりが海に反射して、月が赤く見える現象が起こる日だった。




船長の男は今日のことを言っている。







「でも……¨歌¨が歌われたって……」






イルアラはつぶやく。



誰かが、何か特別な歌を歌っただけで、どうしてここに来るのだろう。



――もしかしたら、月が赤くなる今日、誰かがその特別な歌を歌うと、ここに来なければならないのか…?
< 10 / 12 >

この作品をシェア

pagetop