海と魔物のエトセトラ
「で、¨どうして¨ここに?」
「Ms.サリマン。もうわかっているだろう?俺を困らせないでくれ」
「…………」
2人が黙り込み、イルアラは険悪なムードを感じとった。
船長の男は丸腰だが、まるで、サリマンを殺してしまうのではないかと疑わせるオーラ。
全身の身の毛がよだった。
(Ms.サリマン……)
5対1というサリマンの状況に耐え切れなくなったイルアラは平然を装い、飲み物を持って行こうと立ち上がった。
チャキ………。
だが、耳元で音がした。
首筋には冷たくて刺されたような痛みが走った。
「馬鹿なことは考えるな、長生きはしたいだろう…」
突如、右から聞こえた声。
チラリと目をやると、あの腰に刀を差した男が立っていた。
だが、その脇差しには刀がしまわれておらず…
(…あ、刀向けられてるんだ)
先の鋭い刃物を首にあてられ、ピリッと痛みを感じた。
「何?外野は引っ込んでろ、とでも言うの?」
「あぁ」
「なら、貴方たちも引っ込んでて欲しいわ。貴方たちも一応、外野だし」
「………」
「フィノ、無礼だ。その刀を下ろしてくれ」
見ていたのか、聞いていたのかは知らないが、船長の男が命令した。
それには、さすがに逆らえず隣の男はイルアラから刀を下ろした。
男は眉を寄せて、怪訝そうな顔をして船長の男を見ていた。
不服に染まるアメジストの瞳。
蜘蛛の糸のように細く輝く銀の髪は首の真ん中まで伸びていた。