海と魔物のエトセトラ




一方、イルアラといえば、チョコレート色の髪と瞳。


この¨ミファラ港¨では珍しい色で、周囲の目を集めていた。





「何もないよ。ちょっと、疲れただけだから」

「本当?あまり無理しちゃダメだからね」

「わかってる。――そういえばどうしてランがいるの?今日は休みじゃなかった?」

「今日は特別な人たちが来るから、自主的に」






と言って、可愛らしくウィンクをするラン。


これに何人の男がときめくだろうか…。





――しかし、¨サボり魔¨とも呼ばれる仕事の嫌いなランを、自主的に仕事をさせる客。



どんなお客だろう、とイルアラは興味が沸いてきた。





(もしかしたら、カッコイイ人たちとか…?)





「……………ありえる」






ランのセカンドネームは、数え切れないほどたくさんあり、その中に¨she panther¨がある。



つまり、¨女豹¨。




お客が格好よいなら、ランが自主的に仕事をするのには、納得する。








「理由はともあれ、自主的に仕事をしてくれて嬉しいわ」

「イルは興味ないの?カッコイイって噂の人だよ?」






ランの口が出た核心の言葉。


やはり、ランの言うお客はカッコイイのだ。



(……まったく、もう……)





イルアラは呆れて、ため息をつきそうになった。







「男なんて皆、犬に見えるよ。臭くて、うるさい犬に」

「あらっ、今夜くるお客様は、そんな下衆じゃありません!」

「さぁ、どうかしら」



< 5 / 12 >

この作品をシェア

pagetop