海と魔物のエトセトラ
一方、イルアラといえば、チョコレート色の髪と瞳。
この¨ミファラ港¨では珍しい色で、周囲の目を集めていた。
「何もないよ。ちょっと、疲れただけだから」
「本当?あまり無理しちゃダメだからね」
「わかってる。――そういえばどうしてランがいるの?今日は休みじゃなかった?」
「今日は特別な人たちが来るから、自主的に」
と言って、可愛らしくウィンクをするラン。
これに何人の男がときめくだろうか…。
――しかし、¨サボり魔¨とも呼ばれる仕事の嫌いなランを、自主的に仕事をさせる客。
どんなお客だろう、とイルアラは興味が沸いてきた。
(もしかしたら、カッコイイ人たちとか…?)
「……………ありえる」
ランのセカンドネームは、数え切れないほどたくさんあり、その中に¨she panther¨がある。
つまり、¨女豹¨。
お客が格好よいなら、ランが自主的に仕事をするのには、納得する。
「理由はともあれ、自主的に仕事をしてくれて嬉しいわ」
「イルは興味ないの?カッコイイって噂の人だよ?」
ランの口が出た核心の言葉。
やはり、ランの言うお客はカッコイイのだ。
(……まったく、もう……)
イルアラは呆れて、ため息をつきそうになった。
「男なんて皆、犬に見えるよ。臭くて、うるさい犬に」
「あらっ、今夜くるお客様は、そんな下衆じゃありません!」
「さぁ、どうかしら」