海と魔物のエトセトラ
男なんか犬、いや、野良犬。
イルアラにとっての男はその程度なのだ。
たがら、どんなにカッコイイ男でも目を惹かれることはなかった。
「だいたい、カッコイイなんて噂じゃない。実際は不細工だったら――」
イルアラの言葉を妨げるように、店のドアが開いた。
いや、開いたというよりも、倒れた。
ドアの縁だけが綺麗に残り、倒れたドアは中に入ってくる男たちに踏まれていた。
『Ms.サリマン、会いに来てやったぜー?!』
息の合った2人の青年の声が店に響いた。
それまで騒いでいた海賊たちは急に黙り込み、彼らを睨みつけた。
双子と思われる青年の後ろから続々と入ってくる若い男たち。
至って普通に見える光景に、イルアラは驚いていた。
(………ありない)
イルアラは目にした。
店に続々と入ってくるのは別に驚かないが、その男たちの容姿に目を奪われた。
金糸のような金髪がいれば、炎のように赤々とした髪の者。
一目を引く髪をした男たち。
それに、世界中のどの宝石よりも美しく、輝いている瞳。
まさに、この世の者とは思えないくらいの美貌を彼らは持っていたのだ。
「イル、あの人たちよ」
ランがイルアラの耳元で囁いて、イルアラにその男たちに興味を持たせようとしていた。
しかし、すでにイルアラは興味を持っていたのだ。