海と魔物のエトセトラ
「クローブ、クロード。彼女を呼び出してはだめだよ」
その声と共に、彼らは道を開けた。
イルアラが食い入るように、今から現れる男を見ていた。
「彼女は病弱だ。迷惑をかけてはだめだよ」
彼らの作った道を歩いて現れたのは、金髪で青い目の男。
しかも、ただの金髪や青い目ではなかった。
金糸のように一本一本が輝いたウェーブのかかる髪。
壮大な海を瞳に集めたような、真っ青な目。
(彼女には迷惑をかけるな…?冗談じゃないわよ)
イルアラは彼らのした行動と、言っていることが矛盾していて眉がピクリと動く。
この酒場の女店員、サリマン・アジュリアは、確かに病弱だ。
だから、いつも店の奥で海賊たちの騒ぎ声を聞きながら、寝込んでいる。
だが、騒ぎ声は大丈夫でもドアを蹴破った時の音にはMs.サリマンも驚くだろう。
「てめぇら、ここらじゃ見ねぇ顔だな?」
「Ms.サリマンに何の用だ?」
さすがに、彼らの態度に腹を立てた海賊たち。
その場にいた者、全てが声を上げていく。
長年、世話になっているこの店と店長のサリマンを守ろうとしたのだろう。
「何の用だって?―――何の用だと思う?」
だが、それは彼らには通用しなかった。
口端を少し吊り上げて笑う、青い目の男は、あからさまに挑発をしてきていた。
それに堪忍袋の緒が切れた海賊たちは椅子から一斉に立ち上がる。