海と魔物のエトセトラ
「―さぁ、奥に入って!おっと、全員は無理だからね?」
「ありがとう、Ms.サリマン」
「いいのよ。30年ぶりに来てくれたんだし」
青い目の男とサリマンのやり取り。
耳に自然と入ってくる会話に、引っ掛かるものを見つける。
(30年ぶりに…って、彼らはまだ20代前後だわ……)
どう考えたって意味がわからない。
「クローブ、クロード。それとフィノとオレーモは、俺と一緒に。他の皆は船で待機していてくれないか?」
『うぃーっす…』
¨ありがとう¨と言って、船へと戻る船員たちを見送る青い目の男。
どうやら、青い目の男は船長のようだ。
船長を含めて残ったのは5人。
先程の双子と、赤髪の上半身裸の男。
黒い布で鼻から下を隠した男に、腰に剣を差した男。
気づいてはいたが全員、独特の美貌を持ち合わせていた。
「今日はどうして?それだけはここで言ってもらうわ」
「……………月が」
「?」
「月が血に染まった。そして、¨歌¨が歌われた」
「!!」
目を見開いたサリマン。
どうやら何かに対して、驚いているようだ。
イルアラは好奇心を押さえ込もうと、再び樽の上に座った。
「――悪い気けど、今日は店じまいよ」