嘘つきな恋




あたしの椅子を引く音と
誰かが扉を開ける音が、重なった。


……誰?


肩で息をして、膝に手をつき、まるで“走って来ました!”みたいな男が立っていた。

俯いてるから、顔は分からない。


「…ご……ごめん…、…ま……待たせて……」


はぁ、はぁ…と息をしているから、やっぱり走って来たんだろう。


けど、一体誰に用が……。

彼女とか、かな?


いや、あたしには関係ない。

小林 涼太は来ないし、あたしはやっぱり帰ろう。


あたしはその男が立っている扉とは別の扉から、教室の外に出ようとした。




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