もうひとりの…
誰もいないリビングにひとり。キッチンからは新しい朝の光が降り注いで、明るく照らされていた。

いつの間にか、椅子に座ったまま眠ってしまったらしい。肩には、タオルケットが掛けられていることに気付く。

きっと、夫だ。

眠い目を擦りながら時計を見ると、まだ5時過ぎだった。

目が腫れているような気がして、そっと指で目の辺りを触ってみる。

(昨日、泣いたからなー…)

戸棚のガラスに自分の顔を写し、覗く。

上まぶたはプクリと膨らんで、フランケンみたいだ。

(格好悪い…)

そう思いながら、私は立ったついでにコーヒーの準備をした。いつもは水出しコーヒーを仕込むところだが、今、熱いコーヒーを飲みたかったのだ。

次第にリビングに射す陽射しが強くなる。インスタントコーヒーの入ったカップを手に、白いレースのカーテンを少し開けて、その隙間から空を見上げる。

何の迷いもない青い空

それは紛れもなく生きている私達のもの。

共有できたら良かったのに…

死を選ぶ前に、同じ空を見て泣いたり笑ったりできたら良かったのに…

私は明日も新しい朝を迎えることができる。優しい家族に囲まれて、過ごすことができる。



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