~color~
~prologue~
「伊織ちゃんに会いたくて来ちゃった」
「嬉しい~あたしも会いたかったぁ~!!」
あたしを見つめながら手を握ってきた里中さんに「お酒作るね」と笑顔で交わすと上手く手を払いのけた。
別に触れないで欲しいとか、そんなんじゃない。
むしろ触れられることくらいどうだっていい。
そんな綺麗な女なわけでもないし、勿体ぶるつもりもない。
そうじゃないんだ。
あたしは上手く笑えない。
だから、こういうムードのある雰囲気は苦手。
嘘なんて簡単に出てくるのに
口ではなんとでも言えるのに
無でいられない雰囲気だけは逃げ出したくなる。
可愛い女になってまで、ぶりっこしてまで、お客さんなんていらないし売り上げだっていらない。
あたしが欲しいのはただ1つ
金だけなんだ……。
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