~color~
「流奈……」
夢のような話しだけれど、その声は確かに飛翔くんのもので、なぜだかあたしの頭の上から聞こえてくる。
そして、ドクンドクンと飛翔くんの心臓の音が、あたしの耳の中に入ってくる
とても、早いリズムを打ちながら……。
「なに?」
少しだけ、顔を離し見上げると、飛翔くんは随分あたしを見下ろしていて、そして咄嗟に目を反らした。
「いや、なんでもない」
そう小さな声で話す飛翔くんは少しだけ照れくさそうに髪を触っている。
あたしは、飛翔くんと数えるくらいにしか逢っていなかった中で、たった1つだけ彼の癖を発見していたんだ。
照れた時、恥ずかしそうに顔を背ける時、決まって髪をくしゃくしゃにする。
“まただ…っ”
そうにやけてしまいそうになったあたしの顔は飛翔くんの胸の中にしっかり蹲っている
だけど、そんな仕草がとても愛おしくて、飛翔くんの腰に回していた腕の力を再び強め、そしてTシャツをギュッと掴んだ。
「飛翔くんって、背……高いんだね」
「お前がちっちぇーの!」
「いや、飛翔くんが高いのっ!!」
見上げるとやっぱり飛翔くんはあたしから目を反らす。
そんな姿に「好き」そう小さく呟いた。
飛翔くんがあたしの頭を自分の胸に引き寄せ、力強くあたしを抱きしめ、髪をゆっくり撫でる
あたしは、そのぬくもりを感じただけで、けして大袈裟ではなく、涙が零れおちそうだった。
その手が、あたしの埋まらなかった何かを埋めていく……