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《うん、ありがと》
そう送信すると、あたしは手を伸ばし、適当にドレスを選んだ。
《今日はありがとな!!流奈を見ていたら、なんだか抱きしめたくなっちゃった自分がいたよ》
《飛翔くんってば……!!》
飛翔くんがどんどんあたしを変えていく
どんどんあたしの心を支配していく……
真っ黒だった世界に、少しづつ光を照らしながら近づいてきた飛翔くんが、本当は怖くて、何度も、何度も目を反らした。
その光は真っ直ぐすぎて、だけどあたしが暗闇を歩くには必要な光で……
そんな飛翔くんともっと、ずっと一緒にいたいと願ってしまう。
もうきっと手遅れの所まできてしまってるのだろう……
「伊織よ~最近、なんだか雰囲気違くねぇ?」
「えーっ?そんなことないよ~どんな風に違うの?」
もう何年も通ってくれている司くん。
いつものウイスキーをグラス注ぎながら、そう言葉を返すと、あたしはマドラーでかき混ぜていた。
「ん?なんてゆ~か、人間らしくなった」
その瞬間、あたしのマドラーでお酒をかき混ぜている手が止まっていた。
「おいおい、伊織~ちゃんと仕事してくれよ~」
あはははっと笑ったかと思えば、「こりゃ男でもできたな?」なんて大きな声で笑っているお客さんに、あたしはちっとも笑えなかった。
〝人間らしくなった”
その言葉が〝男できたな”って言葉よりもずっと、あたしの胸に突き刺さる。
こんな時、今までのあたしはどんな風に返していたのだろうか……