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「お疲れ様です」
あの後、あたしは結局、ちゃんとした仕事ができなかった。
そして記憶もあいまいだ。
それがお酒のせいなのか、飛翔くんと司くんを重ねてのせいなのかはよく分からない。
お店のドアを開けると、いつも同様空を見上げる
そこには綺麗な星達が輝いていて、さっきまでいた空間が異次元のように感じてしまう。
ずっと眺めていたらいけないような気がして、やっぱりあたしには異次元の空間が似合っているのかもしれないと、足早に歩いて行く……
「ねぇっ!待ってよ~」
背後から聞こえてきた声が誰なのかは振り向かなくても分かる。
あたしは、そそくさと店を出て来たけど、大きな忘れ物をしていた。
「あ、ごめん千秋」
そう、あたしがお酒を飲んだ帰りには、決まって千秋が運転してくれる。
「さっさと行っちゃってさ~それより、今日大丈夫だった?」
千秋の言ってる大丈夫の意味があたしには、すぐに理解できなかった。
「ん……大丈夫」
「ふ~ん」
横に並んだかと思えば、あたしを怪しげな目で見ている。
なんだが、千秋には見透かされそうで怖い。
それとも、何かあたしが分かりやすいのだろうか……
静かな夜にあたし達のヒールの音だけが、コツコツと鳴り響く
「ねぇ?聞いてる?」
「えっ??だから、車のキーだよ!!」
「あっごめん」
いつの間にか自分の車の前まできていてることに気が付きバッグから車のキーを取り出すと、千秋に渡した。
「分かりやすっ……」
その言葉を残すと、千秋は運転席に乗り込んだ。