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《なんで?早く帰りなよぉ》
そう送信した後、あたしは携帯を閉じバッグに雑に放り込んだ。
そのメールが飛翔くんの気持ちをどう表わしているのかなんて分かっていたくせに……
“早く帰りなよぉ”なんて送ったあたしは冷たい女なのだろうか。
いや、酷い女だろう。
だけど、そのメールに打ち込んだ言葉たちはあたしの本心なんかではない。
こうしなきゃ、ならないんだ……
千秋の視線を感じながらも、窓の方に視線を移した。
きっと、飛翔くんは近くにいる。
逢いたいのに、今すぐ逢えるような関係ではない。
あたしに、そんな時間もない
痛い…
心が痛い……
飛翔くんに出逢ってから度重なるこの胸の痛み。
心をギューッと締め付けられる
自然と自分の手の平を胸に押し付けた
分かってる
このまま、この感情を飛翔くんに全てぶつけてしまったら傷付け苦しめてしまう事。
このまま、あたし達が前に進んだ先に二人の幸せなどない事を……
そんなあたしの行き場のない感情はやがて大きなため息と変わっていく
「はぁ…」
隣に千秋がいる事すら頭の中から消えてしまっていたあたしはそのため息と共に肩を落とした
同時に静かに目を瞑った……