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《逢いたいな……》
そう飛翔くんからメールが入ってきたと同時に、あたしの胸が締め付けられる。
《流奈もだよ…》
そう、返信しながらも、肩を落とした。
きっと、こういう関係でなければ普通に店が終わった後でも逢えるのだろう。
こうして、逢いたいとお互いが嘆きあうこともないのだろう。
メールだけで一生懸命繋がっているあたしと飛翔くん。
“逢いたい”と言って貰えることが、こんなにも辛いことだなんて
こんなにも苦しいものなんて知らなくて……
その言葉が入ってくるたびに少しだけ好きになってしまったことを後悔する自分がいる。
何度も消えてしまおうと思った。
飛翔くんから、不安なメールが入ってくるたびに、
何度、返信ボタンを押すことに躊躇したことがあったか……
それでも、あたしの指は止まらない
白い画面にゆっくりと文字を並べていく……
逢えない二人が唯一繋がりをもつもの
それは手の中に収まる小さい小さい機械
それをはなすことが出来ない
きっと、あたし達の恋もは、この携帯というものがなかったとしたなら始まることすらもなかっただろう。
《そろそろ寝ようか…》
《流奈?ごめんな》
《えっ?何が~?》
《俺が出てきたばかりに寝不足でごめんね、大変なのに》
《そんな事ないもん!大丈夫☆》
《大変なのにな……》
《だから大丈夫だって!!だって幸せだもん!!また後でね!》
《おう!また後で!》
今日も、夜が明けようとしている。
“また後で”
あたし達がいつも寝る前に必ず交わす言葉……
その画面を見ながら、あたしは微笑む……
また、起きてからの繋がれることを約束されたみたいで笑顔が零れる
そう、唯一のあたし達の繋がり……