~color~
《今から出るね♪》
《分かったよ!俺も今から向かうね》
《いつもの所ね!!》
《おう、いつもの所♪》
あたし達の秘密の場所……
初めて待ち合わせした場所が、今は二人の限られた時間を過ごす唯一の場所になっている。
携帯を閉じると、何もなかったかのように旦那と子供に「いってくるね」と笑顔で告げる。
「いってらっしゃい!!」と二人の重なる声になぜだか、振り向けないどころか、目を合わすことも出来ない自分がいた。
仕事に行くことは確か、
それでも、あたしはその前に他の男に逢いに行く
後ろめたさ?
ないなんて、胸を張れない自分がいるからこそ、目を合わすことも振り向くこともできないのであろう。
そんな想いや葛藤も、玄関を飛び出した後に少しずつ薄れていく
許されない恋
あたしの今の状況を世間では“不倫”という言葉で片付けられてしまうのだろう。
車に乗り、いつもみたいに窓を全開にしてエンジンをかけるとタバコを加えて火をつける
アクセルを踏むと同時に高鳴る胸の鼓動……
きっと、あたしはブレーキをかけることさえも忘れてしまっているのだろう。
心地よい風に乗り、タバコの煙が窓から逃げて行く
《到着っ!!俺の勝ち!!!》
そんな、飛翔くんのメールにあたしのアクセルを踏む足に一層力が入った。