~color~
もしも……時間がこの世になかったなら
あたしでも、こうして飛翔くんの傍にずっといることが出来るんだろう……。
車の中のデジタル時計がご親切に光ってあたしの目につく
もう、逢ってから10分が経とうとしている。
あんなにも、逢うまでの時間は長くて、待ち遠しかったのに
もう10分も時を刻んでいる
数字と数字の間の秒針を知らせる記号が規則的に点滅している
止まればいいのに……
「ねぇ……飛翔くん」
「えっ?あ、うん……どした?」
「時間、止めちゃおっか」
「えっ……」
悲しかった
時計が憎く思えてきて「お前……っ、本当にに可愛い事言うな~」そんな飛翔くんの声が耳に入ってきているのに、ちっとも嬉しくなんてない。
あたしの体が飛翔くんで包まれた
温かくて、涙がこぼれる……
「止まればいいのに……」
少し、冷たい飛翔くんの腕を掴みながら、あたしも飛翔くんの腰に腕を回した。
「俺だって、このままさらいたいくらいだよ……」
あたしを抱きしめる力が増し、少しだけ飛翔くんの体が小刻みに震えているような気がしたけど、
今のあたしには悲しそうな顔を覗くことさえも出来ないほど、離れることが怖くて、それだけを恐れている。
離れたくない……
このままずっと。
「流奈……?」
「んっ……?」
あたしの名前を呼んだかと思えば、いっそう強く抱きしめた。
言葉なんか、いらない。
時間だけが時を刻む中で、あたし達に必要なのはむくもりだけ。
おもいきり感じておかないと、すぐに充電がきれる。
それを恐れるかのように、あたし達はただ、抱きしめあっていた。