~color~



飛翔くんの大きな手があたしの髪をゆっくりと撫でて行く


それが凄く心地よくて幸せなはずなのに、あたしの目がしらが熱くなっていく


零れおちないように、頭を少しだけ上げると同時に、 静かに動き続けているデジタル時計があたしの目に入る



「そろそろ時間だね……」


一番言いたくない言葉なのに、どうしても言わざる得ない



その言葉と共に、あたしは静かに飛翔くんから離れた



「時間か……」



あたし達を邪魔するもの



引き裂くもの



こうしている間にも、時を刻みあたし達を離れさせようとする



だけど、これ以上一緒にいたら店を遅刻してしまう。



ダッシュボードの上に無造作に置かれている携帯と車の鍵を握ると、飛翔くんの視線を感じる




「携帯光ってるぞ!」


「あ、うん……」



その場でメールを開くと“お客サン”のフォルダーについてるメールマーク。



《今日は出勤だよね?後で行くね♪》



そのメールを見た瞬間、雑に携帯を閉じ肩を落とした



現実……



もうこの車から降りた瞬間に待ち構えているもの。



「平気なの?返さなくて」


「大丈夫だよ!!」



少しだけ、冷たい視線を感じた気がしたが、笑顔でそう言い返した。



悟られちゃいけない……



心配なんてかけたくない



少しだけ重さを感じた携帯をポケットにしまうと、あたしは飛翔くんの車を後ろ髪を引かれる思いで降りた。



「行ってきます♪」


「おう!行ってらっしゃい!!」



笑顔で手を振りながら、ドアを閉めると小さくため息をつき自分の車に乗り込んだ。




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