~color~


「伊織大丈夫か?」


「えっ?なにが?」


「いや?様子へん……」


「そんなことない、ない!それじゃあ大変だったよね?」


「うん、でもしょうがねぇ~んだよな」



頭では違うことを考えつつも、あたしは人の話しを聞いて記憶している。



いつからか、そんな技さえも身についてしまった。



記憶



この世界で、なくしてはいけないもの。

お客さんとの会話、名前。



それが初めて会った人でさえも、あたしの頭の中には勝手にインプットされていく



『よく、覚えてるなぁ~!!』


いつも、色んなお客サンに言われる度に“当たり前じゃん”そう心の中で呟く。



「だけどさ、慎二さんはいなきゃいけない存在だと思うよ?」


「そうなのかな、そう言われるとよ頑張らなきゃ!って思うんだけど……」



そんなやり取りをしている時、ボーイがあたしの前を塞ぐ


「お話中に申し訳ありません、伊織さんお願いします」



きた……



そのボーイ言葉に大貫さんの方に目をやると、彼はあたしに笑顔を見せた。



「行ってくるね、待ってて?」


「おう、待ってるよ!!」



慎二さんに笑顔で小さく手を振り、あたしは大貫さんの方へ向かって歩く……



分かってる。

全て見られてる……


あたしは、その不安を隠しながら、フィールドをただ歩いた。



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