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「伊織!遅いっ!!」
後方の言葉を言い放った瞬間、鋭い目つきに変わった。
「ごめんね」
そう言いながら、お酒を薄めに作る。
この人が酔っ払ってしまうと一層たちが悪い……
「あれっ??」
「なに?」
その瞬間、大貫さんの手があたしの耳に触れ、それを一瞬で振り払った。
「いやっ!なに?」
少し、引き攣った顔をしたかと思うと、腕を強く握りしめる
「ピアス、1つないよ?」
咄嗟に自分の耳を触り確認をした。
“あっ……もしかして”
「どこで落としたの?」
その言葉に大貫さんの顔を見ると、怪しむような目つきで睨んでいる。
「腕、いたい……」
「あ、ごめんね?伊織……」
掴んでいた手を放したかと思えば撫でてくる。
封印していた飛翔くんへの気持ちが溢れ出していく……
きっと、一緒にいる時に落としたのだろう
「で、誰かと一緒にでもいたの?」
けして、笑い飛ばして流せるような雰囲気ではなかった。
大貫さんの視線があたしを刺す
「いないし、付け忘れ?」
そう言いながら、片方のピアスも取り、ポーチの中にそっと入れた。
なんで気付かなかったんだろう、よりによって気付かれた相手が大貫さんだなんて。
自分のグラスにも慌ててお酒を作る素振りを始めたが、その横で大きなため息が聞こえた。
「彼氏はいないって言ったよね?信じていいんでしょ?」
飛翔くんのことを否定しなくてはいけない自分にも戸惑い一瞬だけ、言葉に詰まりながらも
「当たり前じゃん」そう、笑っているあたしが簡単に出来上がった
「信じてるよ」
その言葉に、全身に鳥肌がたっていく……
だけど、これが、現実。
飛翔くんと一緒にいる時はきっと、夢の中に入り込んでいるんだろう。
それはきっといつか目覚めと共に、あやふやになっていく……
あたしにあんなに幸せな時間があることすら、やっぱりありえない話しなのだろう。
ふと、そんなことが頭を過り、なんだか笑えてる自分がいた。