~color~
なぜだか今日はやけに酔いが回った。
いつもと同じくらいしか飲んでいないはずだし、調子が悪いわけでもない。
「気持ちわるっ」
店も閉店し、更衣室で私服に着替えながらそう呟くと、隣で笑いながらあたしを見ている唯一仲の良い千秋がいた。
「なになに、調子狂った~?」
「なにがよ」
「あの新規の若い客のせいで」
「はい?何言ってんの?」
「どした?怒るなんて伊織らしくなっ……」
深いため息をおとせば、咄嗟にあの〝つばさ”の顔が浮かんできた。
あたしの中に入ってくるなんて……
きっと同じ名前のせいだってことくらい分かってる。
だけど本当にそれだけ?
〝あの新規の若い客のせいで”
千秋が言い放った言葉が頭から離れずにいる。
そしてそんな千秋の方を向けば、やっっぱりニタニタ笑いながらあたしを見つめていた。
「やっぱ伊織変だわ……」
それだけ呟くと「帰るよ」と一言残し更衣室から出ていく千秋の後ろ姿を見ながら、着替えをささっと済ませた。
車代わりに運転してもらおう。
車で来てしまったことを後悔しながら、あたしも千秋の後に続いた。