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「もしもし?聞いてる?」
「えっ?なに?」
「だから携帯、鳴ってるってば」
「えっ!?」
運転は千秋にお願いして、窓を開けながら風にあたっていると、千秋があたしに話しかけた。
「なに?酔っぱらい?それとも……」
その千秋の言葉を最後まで聞く前に、そそくさと携帯をバッグの中から取り出すと、知らない番号があたしの携帯を呼んでいた。
「出ないの?」
「出るよ」
そう言いながら通話ボタンを押すと、はっきりと覚えている声があたしの耳に入ってくる。
「あっ、俺っ!誰だか分かる…?」
「わからねぇ~だろ?」
それはまるで〝俺のことなんか……”そんな切なさに聞こえた。
それでも残念なことに、あたしは最初の一言で誰だか分かってしまうほど、今日のあたしをおかしくさせている人物だ。
だけど、大切なお客様だ。
「つばさくんでしょ?」
「そ、そうだよ!よく分かったな!しかも電話…本当に出たな~」
さっきとはまるで別人のようなテンションの高さに、コイツもきっと酒がかなり入ってるに違いないとそう思った。
「電話するから絶対出てな!!って言ったでしょ?だからちゃんと出たよ」
心うらはらに、そう優しい声で答えると、千秋があたしを見つめていた。
調子狂うな……そう思いながら、どうしたら早く電話を切れるかなんてことばかりが頭に過っていて、会話なんて全然覚えていなかった。