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あたし達を引き裂く時間というもの
それが迫ってきていることなんて十分、分かっているはずなのに、それでも……あたしの口は動こうとするのに時間がかかっていた。
「飛翔くんは、流奈のこと彼女だと呼べる?俺の女だって言える?」
「流奈……」
「俺の女っ!って、みんなに紹介できる?」
「………」
気がついたらあたし心の叫びを、あたしの許可なし勝手に動いていた
分かっていたんだ……
こうして攻めてしまうことになるって
だからこそ、あたし達の関係を形にはしてはいけないって。
「流奈は俺が大好きな、たった1人の俺の女だよ」
「飛翔くん……」
俺の女
なのに、俺だけの女ではない。
その悲しい現実が、あたしを襲う……
「あっ!やべっ!何言っちゃってるんだろ……」
いつも照れ屋で、そんな言葉なんて顔にも似合わないはずなのに
力強く言ったその言葉は、張りつめた空気を一瞬でやわらかくしていく。
「飛翔くんてばっ」
照れくさそうに俯いているのを、からかうと頭をかきながら立ち上がった。
「流奈うぜーもういい」
「なんでよ〜!嬉しかったもん!!」
「もういいよ!ばか!」
そう、現実に直面した時にはこうしてその問題から少しずつ逃げてしまうことしか出来なかった。
お互い、よく分かっていて
自然とその問題から遠ざかるようにじゃれあう。
繋いだ手をはなさぬまま、
その場から動くことに脅えて……
なにもなかったかのように……