~color~
家の前まで着くと、ずっと片手に持ったままの携帯に目をやった。
ランプがあたしに着信を教えてくれている。
立ち止まりそれを開けば〝新着メール1件”という文字があたしの目に飛び込んできて、メールマークのボタンを押す手がかすかに震えていた。
受信者は登録されていないアドレス。
それだけで〝つばさくん”からのものだと分かった。
《家、着いたかな?おやすみ!》
《着いたよん♪今日はありがとう!おやすみ~!》
そんなメールを打ち込み、送信されていく画面を見つめると
それはお客さんに対しての営業的なメールなのかと自分に疑問を持ってしまっている。
「なにしてんだか……」
家の前で大きなため息を吐き出しながら、玄関を開けると、そのままソファーに身を預けた。
目を瞑ると、〝つばさくん”の顔が浮かんだ。
何かを無くしたようなあの悲しい目……
あたしを見る冷たい眼差し……
人を信用してないような鋭い目つき……
気持ちが入ってない変化のない声のトーン。
「どうしてあんな……」
関係ないはずなのに、彼があたしを支配しようとしている。
アドレスと電話番号を登録すると、名前入力の所で手が止まった。
〝つばさ”そこまで打ち込むと手が止まり画面を暫く見つめた。
〝つばさくん”そう打ち直すまでに、あたしはどのくらい時間がかかったのだろう。
携帯を閉じると、そのまま眠りについた。