~color~



家の前まで着くと、ずっと片手に持ったままの携帯に目をやった。


ランプがあたしに着信を教えてくれている。



立ち止まりそれを開けば〝新着メール1件”という文字があたしの目に飛び込んできて、メールマークのボタンを押す手がかすかに震えていた。



受信者は登録されていないアドレス。


それだけで〝つばさくん”からのものだと分かった。



《家、着いたかな?おやすみ!》


《着いたよん♪今日はありがとう!おやすみ~!》



そんなメールを打ち込み、送信されていく画面を見つめると


それはお客さんに対しての営業的なメールなのかと自分に疑問を持ってしまっている。



「なにしてんだか……」


家の前で大きなため息を吐き出しながら、玄関を開けると、そのままソファーに身を預けた。





目を瞑ると、〝つばさくん”の顔が浮かんだ。



何かを無くしたようなあの悲しい目……


あたしを見る冷たい眼差し……


人を信用してないような鋭い目つき……


気持ちが入ってない変化のない声のトーン。





「どうしてあんな……」



関係ないはずなのに、彼があたしを支配しようとしている。



アドレスと電話番号を登録すると、名前入力の所で手が止まった。



〝つばさ”そこまで打ち込むと手が止まり画面を暫く見つめた。



〝つばさくん”そう打ち直すまでに、あたしはどのくらい時間がかかったのだろう。



携帯を閉じると、そのまま眠りについた。








< 18 / 378 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop