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あっ……
離れてしまわなきゃいけない時間が迫ってることが分かっている飛翔くんは
あたしを自分の胸におもいっきり引き寄せると「俺のこと好き?」と静かに耳元でささやいた。
消えてなくなってしまいそうな声から不安を感じ取り「大好きだよ」と、背伸びし首に腕を回した。
「ありがとう、流奈、温かいな……」
「うん、だって24度に設定されてるからね♪」
飛翔くんがいつも設定してくれている車の中の温度は心地いい
いつも車に乗り込む時に、寒がりのあたしのために設定してくれている、あたしだけの温度……。
「そろそろ、時間だろ」
「んっ?」
「もう、遅刻になっちゃうな」
飛翔くんは、あたしが先に車を降りてしまうことが嫌なせいか、バイバイの時にはきまって先に車から降りる。
そして、あたしの助手席のドアの前で悲しそうな顔をしながらも笑顔を作っているんだ。
「飛翔くん!!」
その胸に飛び込むと、いつもは凄い悲しみにおちる……
だけど、今日はまだ一緒にいられる
「バカ……大好きだよ」
照れくさそうに言う飛翔くんを見上げていると、「あ~これからまた不安になる~!!」
なんて空に向かって大きな声で言う飛翔くんに
これ以上嘘はつけないと思いしがみつきながら口を開いた。
「行かないよ……」
「えっ!?」
あたしの体を少しだけ放し顔を覗き込んでいる飛翔くんは、意味がわからないようで不思議そうな顔をしている。
「店、行かない……」
その言葉でも理解してなさそうな飛翔くんに「もう」なんて胸を叩きながらも、
「飛翔くんと一緒にいたい」と恥ずかしながらにも口にした。