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「運転手さん遅いです!!早く出発して下さい!」
飛翔くんが、車に乗り込んだ瞬間に助手席から乗り出しクラクションを鳴らすと
「おい、バカやろ!!近所迷惑だろ!」と焦りつつある飛翔くんに「じゃあ、出発しなきゃ!!」と笑いながら言うと、笑みを零していた。
静かに車が動きだす
あたし達の秘密の場所から、一緒にこれから幸せな空間に出ようとしている。
いつもは、人目のつかないこの場所で、あたし達は時間に脅えて逢っているのに
今日はまるで、違った世界に踏み出すよう……
「お客様、どちらまで行かれますか?」
「………」
「お客様……?」
「幸せな場所まで……」
飛翔くんと離れることのない場所まで行ってしまいたい。
誰もいなくて、時間に気にしなくていい
幸せな場所に……
えっ……!?
いきなりかけた急ブレーキにあたしの体が少しだけ前に出ると「幸せな場所って……」と恥ずかしそうにあたしの顔を覗いた。
その緩んでいる顔を見ると、飛翔くんが何を考えているのかすぐに分かってしまう。
「飛翔くんのエッチ!」
「ああ、変態さ…いや、変態の領域を越えてるかもな」
真剣な顔をして言う飛翔くんを直視することができずに、あたしは下を向いた。
体を重ねること…
考えてないわけではなかった、飛翔くんだって男
だけど、怖かった……
綺麗な飛翔くんに自分が抱かれてしまうことに脅えていた。
「しょうがねぇ〜よ、流奈の全てを俺のものにしたいんだから」
「ば〜か!」
あまりにも真剣な顔をしている飛翔くんに心が痛み、あっかんべ~なんてしておちゃらけてもみたが、
さけれるものなら、さけていたいとずっと思っていた。
汚れている自分を、さらけ出してしまう勇気など
今のあたしには持ち合わせてはいないから……