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窓の外を眺めていた
いつも通っている道なはずなのに
飛翔くんの隣にいると、いつも見えてなかった景色が目に入ってくる。
いつもは、そんな余裕などなくて
過ぎ去る景色さえも、視界になんて入ってさえこなくて……
毎日がむしゃらに生きてきていた。
早く、前に進むことだけを考えて
過ぎ去っていくものは、二度と振り返らないと……
「流奈よ、幸せな場所って何処だ?」
「んっ…?」
「行きたい所あるの?」
幸せな場所……
それはきっと、あたしと飛翔くんは辿り着くことはないのだろうか。
幸せそうに肩を並べて、腕をからませ歩いているカップル……
あたしも、飛翔くんの横でいつもあんな風に笑えているのだろうか。
飛翔くんの瞳に映るあたしは
いつも悲しそうな顔をしていないだろうか……
「おい?聞いてる?」
「飛翔くんかっこいい!!」
運転している姿を見ながら話を反らし、ハンドルを握っていない方の手を強く握った。
「ば、ばか!なんだよ急に…事故るよ?」
笑っていよう……
一緒にいる時くらい
飛翔くんが、あたしと離れている時には悲しい顔をしているあたしを思い出してしまうのは、とても悲しすぎるから。
笑顔のあたしを焼き付けていて欲しい……。
外であんな風に腕をからませ歩くことがあたし達には許されないのなら
こうして、この空間で飛翔くんの体温を感じていよう……
「飛翔くんと一緒なら何処でも幸せな場所なんだよ」
「えっ?……流奈」
握っていた手を絡ませあたしは笑った。