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飛翔くんの車がスピードがだんだん上がっていく……
こうしていつも隣にいれたらどんなに幸せなんだろう。
運転している飛翔くんを見つめると真っ直ぐ前だけを向いている
だけどそれは、一点を見つめているかのようにも見えて……
「どこに行くの?」
音楽だけが流れている空間で静かに飛翔くんに言うと車のスピードが落ちてあたしの方を見つめた。
「んっ?別に……」
「なんか、いい場所見つけたかと思ったよ」
「俺に決めさせたら帰らせないよ?」
「うん……」
少し戸惑いながらも、それでもいい……だなんて思ってしまったあたしは最低な女だろう。
妻としても、母親としても、一人の人間としても。
「じゃあ、俺の家でも行く?」
「えっ??」
胸の鼓動が早いリズムを打ち出す
「やだ??」
「平気なの?」
「うん、友達連れてきたって言うからさ」
「あ、うん……」
飛翔くんのその言葉はあたしの胸を強く痛め、一瞬で高鳴っていた鼓動が止んだ。
“友達”
普通の恋人同士なら、“彼女”と紹介して貰えるのだろうか……
「誰かに見られたらまずいから、裏から回るな?」
「うん、ごめんね」
「はっ?何を謝ってんの!!」
苦しい……
飛翔くんの隣にいるのに、こんなにも苦しい……
信号が赤になり、横断歩道を仲良さそうに歩いているカップル
咄嗟に目を反らした
飛翔くんと一緒にいる時、あたしは錯覚していたのかもしれない。
あの二人の秘密の場所にいる時は考えもしなかったこと……
一歩こうして現実へと足を踏み込めば、あたし達の関係はけして許されるものではない。
カップルから反らした視線は窓に自然と移った
だけど、なぜだか幸せそうなカップルばかりが目について静かに目を閉じた。