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人目を気にしながら翔クンの家の玄関前までたどり着くと胸を撫で下ろした。
だけど目の前にある玄関を見た瞬間に、ドキドキして落着きがなくなっていく
「そんな緊張すんなって!!」
優しく笑う飛翔くんにあたしも笑ってみせたが、胸の鼓動は速さを増すばかりだ……
飛翔くんは、お父さんとお兄ちゃんと3人暮らしだと聞いてはいたが詳しい話は触れていない。
「兄貴いなきゃいいけどな……」
そう呟いたと思ったら勢いよく玄関を開けて「ただいま」と元気に入って行った。
ドアを抑えられあたしも中に入ると視線の先に人影を感じ、それはお父さんだろうと思った。
「おじゃまします」と少し大きな声で言うと、優しそうな顔をしているお父さんがリビングの部屋だろうドアのガラスごしに頭を下げ微笑んでくれた。
「ここに入ってて」
「うん」
飛翔くんの部屋と思われる場所に案内されると電気がつき飛翔くんはリビングの方へ急ぎ足で向かいドアが閉まった。
「ちげ~よぉ~友達だって、うるっせ~なぁ~」
笑ながらそう話す飛翔くんの声が聞こえてくる。
お父さんの声は聞き取れなかったが、きっとひやかされているのだろう。
「友達……か……」
さっき、そう紹介するって言われていたはずなのに、聞こえてくる声がまた苦しめる。
大きなため息と共に、ベッドの前に静かに腰を下ろした。
「ごめんな、流奈」
「大丈夫だよ」
いつもより少しだけテンションが高いように感じる飛翔くん。
「なんもねぇ~だろ」
なんて照れくさそうにあたしと距離を取りながら無駄に動いている飛翔くんは緊張しているに違いないと思った。
いつもこの部屋で……
飛翔くんは寝におちるまであたしとメールをしているんだ。
男の人の部屋にしては、とても綺麗に片づけられていて、
あたしが周りをキョロキョロしていると、飛翔くんはいきなりゴミを取るもので掃除をし始めた。
「何してんの?」
「ゴミ落ちてるの嫌なんだよね、潔癖に近いかも…」
「マジ?」
「マジ……」
そう言いながら、ゴミを捨てると「手を洗ってくる」とドアを開け出て行った。
あたしはクスッと声を漏らした。
いつもは落ち着ついている雰囲気の飛翔くんがジタバタしている。
それもそうだろう……
こんな密室の空間で、あたしと飛翔くん二人なのだから。
あたしだって平然を装うのに精いっぱい
もし……
飛翔くんがあたしを求めてきても受け入れられるのか分からない、
飛翔くんはあたしを知らない。
過去のあたしなど……