~color~



《おーい、寝たろ?》


暫くして、再び鳴ったメール音に、静かに携帯を開けた。


あたしは、何をしているんだろう。


つばさくんに全てがバレたとしても、常連さんじゃあるまいし、太客でもあるまいし、お客さんの1人くらい失うのなんて、今のあたしには痛くないはず。




《寝てないよーだ!寝ないって言ったじゃん?それよりマヂびっくりなんだけど~歩いて行ける距離に居るんじゃん!!》



そう送信しながら、ずっと昔から近くにいたんだな……と思いながらも、決して絡まるような、繋がるような人じゃなかったんだなと思った。



そう、当時あたしは真面目な中学生なんかじゃない。



《そうだね》



急に寂しそうなメールを送ってきた理由をあたしは聞くことができなかった。



彼はお客さんだ。



お客さんとして引っ張るためにあたしは、こうして毎日連絡を取っているんだ。



それでも……



彼の真っ直ぐさ、真面目さ、あの眼からは想像できない純粋さが分かれば分かるほど、なんだか後ろめたい自分が出てくる。



だけどあたしは、自分に何度も言い聞かせた。


このモヤモヤが何かは分からないけど、彼を絶対に自分のお客さんにすると……





そう、つばさくんから


《流奈に会いたい、店の外で会えないなら伊織にでもいい、だから店に今日行こうかな》



そう入ってくるまでは……。


< 20 / 378 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop