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《おーい、寝たろ?》
暫くして、再び鳴ったメール音に、静かに携帯を開けた。
あたしは、何をしているんだろう。
つばさくんに全てがバレたとしても、常連さんじゃあるまいし、太客でもあるまいし、お客さんの1人くらい失うのなんて、今のあたしには痛くないはず。
《寝てないよーだ!寝ないって言ったじゃん?それよりマヂびっくりなんだけど~歩いて行ける距離に居るんじゃん!!》
そう送信しながら、ずっと昔から近くにいたんだな……と思いながらも、決して絡まるような、繋がるような人じゃなかったんだなと思った。
そう、当時あたしは真面目な中学生なんかじゃない。
《そうだね》
急に寂しそうなメールを送ってきた理由をあたしは聞くことができなかった。
彼はお客さんだ。
お客さんとして引っ張るためにあたしは、こうして毎日連絡を取っているんだ。
それでも……
彼の真っ直ぐさ、真面目さ、あの眼からは想像できない純粋さが分かれば分かるほど、なんだか後ろめたい自分が出てくる。
だけどあたしは、自分に何度も言い聞かせた。
このモヤモヤが何かは分からないけど、彼を絶対に自分のお客さんにすると……
そう、つばさくんから
《流奈に会いたい、店の外で会えないなら伊織にでもいい、だから店に今日行こうかな》
そう入ってくるまでは……。