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「流奈……?」
「待ってね」
時計を裏返しにすると、電源を切り時計をいじった。
「よし!これでいい……」
元の位置にもどしながら時計を指差した。
「飛翔くん見て?」
今の時間、10時半で時計は動くことをあたしの手によって阻止された。
忘れてしまいたい
時間に脅えながら、幸せな時間を苦しい気持ちになることさえも……
今だけは……。
「流奈、時間とめたよ?」
「流奈……」
一生懸命笑った
そして飛翔くんにおもいっきりしがみついた。
「流奈、ありがとう……」
その飛翔くんの“ありがとう”はなぜが凄く悲しくて、切なくて……
この世に時間というものがあることをやっぱり恨んだ。
「お前、本当に可愛いな」
「飛翔くん本当にかっこいいな」
「ばか」
「アハハハハッ♪」
こうしている間にも時間が動いていることは分かっているはずなのに、
止まっている時計を見るだけで、少しだけ幸せな気持ちになれる。
少なくとも、あたし達を引き裂こうとしていた時計は止まっているのだから……