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《伊織はなんで俺に営業しねぇーの?》
《えっ??あ、うん。もともと営業とか嫌でさ》
そう送るのが精いっぱいで、
きっと、自分が客とキャストという関係になることを嫌がっている。
店に来てしまったら、あたしは本当に1人のお客さんとして接しなきゃいけない。
仕事をしなくてはいけない。
そもそも、お客さんとキャストという形のままに違いないんだけど……
《そっか、そっか!!じゃぁ、黙って来い!!って感じか(笑)》
《えっ??違うのに》
店には来てほしくない……
《じゃ、なに?》
《もう!!つばさくん今日さ夜パチ行くの?》
《えっ??あ、行くよ!!する事ねぇし、暇人だから俺……》
《じゃぁ、早くバイト終わったらパチに顔出すよ!!》
《はっ??店じゃねぇの?しかも、客に見られたりしたらまずいんじゃねぇーの??》
《店の時間まで行くよ!!そしたら店来なくていいでしょ?》
《マジ?流奈に会えるの?テンション上がるんだけど》
この日初めて、つばさくんと店以外で会う約束をした。
同伴でもない、あたしの意思でつばさくんと約束をした。
彼に会いたいと思ってしまった。
さっきより増していく胸の鼓動に、あたし自身が1番びっくりしている。
これって……
鏡に映る自分の姿をじっと見ながら、いつもよりも念入りに化粧をして、綺麗に髪を巻いた。