~color~



飛翔くんの肩が震えている


あたしは小さい声でささやいた


「だっていったでしょ?流奈、待ってられるって……」


「おせーよ!!」


「飛翔くんがね……」


「流奈だろ……」


いつもよりトーンが低い飛翔くんの声は、あたしの心に悲しみまでも一緒にを伝えてくれた。



どうしてだろう



気持ちが重なっているのに、どうしてあたし達は普通に笑い合うことが出来ないのだろう


いつも、手を伸ばしてしまったら届きそうな“別れ”にずっと脅え続けている。



そしてそれは、ずっとあたし達に纏わりつくんだ……




すれ違ったりもしたけど、またここで出逢えたね。


そう、二人だけの秘密の場所……


何度すれ違ったって、きっとここでまた出逢える。





「もう、飛翔くんのいなくなることなんて考えられない……」


「俺も、もう離さねぇよ……」



傷を舐め合うことなんて出来やしない


悲しみを半分背負うことなんて出来やしない



そう、ずっと思って生きてきていた


だから一人で立ち上がらなきゃいけないと……


人に縋ってしまうほど、弱くない……


そう思っていたのに





飛翔くんの愛を知ってからのあたしは

傷を舐め合うことができると知ってしまった


悲しみも半分になることも知ってしまった



そして、幸せを感じる喜びも……




たくさん知ってしまった



この温もりがなくなってしまったら……



そう考えるだけでおかしくなってしまう。



「愛してる……」

「流奈も……」



今が幸せならそれでいい


そう思っていたあたしの心に少しずつ変化がでてきていた。



ずっと一緒にいたい……


そんな贅沢な願いが強く……



それを求めてしまったら終わりだと自分でもよく分かっていたくせに。




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