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結局、仕事行く前に流した涙のせいで化粧なんてものは取れてるし
おまけに目が真っ赤に腫れている
「少し遅れます」
そう車の中から店長に電話をすると、一度メイクを落としバッグに入っていたタオルを濡らして暫く目を冷やしていた。
『流奈とこの先、未来がないって分かっているなら、俺……無理かもしれない』
その言葉が消えては浮かんできて、あたしはまた涙が出そうになるのを堪えるために上を向きながら顔にタオルをかけシートに寄りかかった。
仕事に行かなくちゃいけない
お客さんを待たしてるあたしは、どうしようもない。
恋愛に溺れている自分が、始めて恐ろしく感じた
だけど飛翔くんのいない世界で、あたしはどうやって笑えばいいのだろう。
大きなため息と共に体を起こすと、車の中の電気をつけ急いで化粧をし始めた
「おお!伊織っ、早く……」
店の前に着くと、店長があたしを呼んでいた
「本当にごめんなさい」
「いいよ、それより大丈夫か?」
「えっ?」
「なんか、いつもと顔つきが違うぞ?」
「あ、全然大丈夫♪」
なるべく顔を見せないように更衣室に向かうと「無理すんなよ」と後ろから店長の声が聞こえた。
「無理なことなんてないんだよ……」
飛翔くんが言った言葉がまた頭を過って、気がつけばそう小さく呟いていた。
更衣室に入った瞬間に、映し出されている自分の姿は醜い……
同じ鏡というものに映し出されているはずなのに、何時間前と全然違っている自分の姿にまた大きくため息をつき、その場に座りこんだ。
「飛翔くん……」
いつから持ち続けていたのだろう
手には自然と携帯が握られていた。
いつもなら店に着いた瞬間に、飛翔くんからのメールを知らせる黄色いランプが光を放つ
それを待つかのように、自然と握られていた携帯がなんだか寂しそうに見えた。