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「よし、乾杯だっ!!」
「えっ??」
テーブルに目をやるとカクテルが入っているグラスが目の前に置かれている。
いつの間に……
きっと、こうしてお客さんの隣に座っていたって、あたしはここにはいないのだろう。
どこか遠くに行っちゃっているようだ
カクテルが運ばれてきたことすら気づかないくらいに……
「あ、ごめんね乾杯っ♪」
お疲れ様♪と隣にいる梶原さんに言いながらグラスを口に運ぼうとした時、あたしの手からするりとそれが真下に落ちていく
ガシャンーーーー!!!!
「あっ!!」
「ごめんなさい」
カクテルが零れて飛び散りながら、グラスは原型すらない。
まるで、あたしの心の中みたいに……
慌ててボーイが駆けつけて、それらを素早く片付けていく。
立ち尽くしたまま、何もできないあたしの耳は近くでカラオケをしている女の子の歌声の方へと傾けていて
視線は、液晶の画面へと向いている。
聞こえてしまったんだ
一生懸命、仕事をしようと重ね合わせたグラスの後に
あの、曲を……
なんてタイミングなんだろう。
自然と目から涙が零れおちる……
それに焦っている自分は、肩たまたま肩にかけていたストールで上手く涙を拭う。
『悲しい曲だね、こんな風になったら嫌だよ』
『ならねぇ~よ』
そう、あたしに優しい笑顔を見せていてくれた飛翔くん。
どうして……
力が抜けたあたしは、そのまま梶原さんの横にストンを腰をおろした。