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「そんな怖い顔をして~、まぁそんな伊織ちゃんを見るのも初めてなんだけどさ」
「えっ??」
不思議そうに、きっと変な顔をして梶原さんを見ていたのであろう、
あたしの方を見るなりまた煙をぶぅ~と吐くと笑いながらむせていた。
「え?なに?」
「だからね、なんて言うんだろう。人間らしくなったってことだよ」
そんなことを面等向かって言われてもなかなか腑に落ちない自分がいる。
「前はさ、ぬかりがないって言うか……いつも同じような伊織ちゃんだった、いつも笑っていて優しくて俺のくだらない話でもずっと聞いていてくれて」
そう話終えると「そんな伊織ちゃんもたまらないんだけど♪」
と付け加えると通り縋ったボーイに「伊織 ちゃんの新しい飲み物よろしく」と声をかけていた。
そんなの、あたしがしているあたしなりの接客姿だよ思った。
元気のないお客さんには元気を与える。
愚痴をこぼしているお客さんには相槌を付きながらも目をそらさず聞く。
あたしはあたしなりの接客で、お客さんに最後に笑顔で帰ってもらう。
当たり前の話だ
この店の中で、こうして接客している以上そうしなければいけない義務みたいなものが、あたしを作りあげただけ……
「でも……」
「でも?」
「疲れないのかな?って思ったこともある。たまにさ他のお客さんがトイレにいっている間とか隣で接客していた女の子を見たりするんだ」
店内を見回しながらそう言う梶原さんにつられて、あたしも同じように見回した。
「そうするとさ、みんな結構素だったりするんだよ。中にはため息をついてる女の子もいる」
そんなの御法度うだろ……
なんて思ったが、あえて口にはせずにそのまま話を聞き続けた。