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「てかよ、言おうかどうか迷ったんだけど、さっき俺に間違えてメール送ってきたぞ!!気づいてねぇべ?」
手に持ったままの携帯を今すぐにでも開き、自分の送信メールを見たいと思ったけど、
とてもそんな行動が出来るような雰囲気でもなく、つばさくんの目はしっかりあたしを捉えている。
「嘘っ……」
そう言うのが精いっぱいで、あたしはその時、お客さんに送るはずのメールを送ってしまったのだろうと、その場から逃げてしまいたい思いでいっぱいだった。
「嘘じゃねぇ~ってほら」
目の前に差し出された携帯の画面。
そこにはしっかり自分が送ったはずのお客さんへのメールが映し出されている。
「どうせ、男にでも送ったんだろ?しかも俺とやり取りしてる時間帯と同じってゆ~ね」
笑いながらあたしに言ってみせていたけど、つばさくんの目は全然笑っていなくて、もはや弁解することも出来ないような鋭い眼差し。
この目……
初めてあたしがつばさくんの席に座った時にあたしに向けた目……。
「誰にでも、ハートマークつけない方がいいよ!!男は勘違いするからねぇ……」
最後に大きくタバコの煙を吸い込んだかと思うと、それを宙に向かって強く吹出す。
「なんだか、お前のことが分かった気がしたよ!!」
そう最後に言葉を残して、地面にタバコを擦り付けると、そのまま立ち「そろそろ時間だろ」と冷たく言い放った。
「うん」
「じゃあな」
あたしが停めてある車とは反対方向に背を向けると手を上に上げそのまま歩き出していく。
その後ろ姿をみつめたまま、立ちすくんでいたあたしは自分の足を踏み出すのに時間がかかっていて……
それより驚いているのは、とてつもなく胸が酷く痛んでいること……