~color~
何をしていても、浮かんでくるのは飛翔くんのことばかり。
あたしの頭の中はそれしか受け付けていないのだろうか……
もっと、違うことにも反応して、動いてほしいと今日ばかりは思った。
「ねぇ?聞いてる?」
「え、あっごめん……」
「でさぁ……………」
旦那の発する言葉が上手くあたしの頭の中に入ってはこなくて、聞いてるはずの話も飛んでいる
あたしの目には、旦那がただ口をパクパクしているようにしか移っていない。
「ねぇ?」
「ん?」
「今日、飲みに行ってきていい?」
「はっ?」
「だめ?」
「え?あ、うん。いいけど急だな」
もうその言葉はあたしの背後から聞こえる。
旦那のしぶしぶなOKが出た瞬間、携帯を開き友達のフォルダーから香織を検索しだした。
《今日、飲みにいけないよね?急だから無理だよね?》
あたしが飲みに行く時、前もって旦那に了解を取る。
だから今回の行動に旦那の疑いの目があたしに突き刺さっているのも感じている
「本当ごめんね?」
「おう、いいよ」
もう限界だった。
暗くなっていく外の景色を眺めながら、逢えるはずもないのにあたしは飛翔くんと繋がる何かを持ちたいと思ってしまう。
旦那から少し離れるとあたしの携帯のランプが光り始めた。
こんな時でさえ、光るはずのない黄色いランプかと期待している自分もいるのが情けない
開くとそれは香織からのメールだった。