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《どうした?あたしは平気だけど流奈は平気なの?》
香織だってびっくりしているであろう。
こんな急にあたしが誘うことなんて初めてなのだから……
《なんとか、もう家にいるの限界で》
《分かった、何時??》
《支度したら連絡する》
《了解》
ごめんね……
こんな時、やっぱり求めてしまうのは話を聞いてくれる友達で
自分を分かってくれている友達。
携帯を閉じると、力が抜けた
破裂してしまいそうなこの想いをここで抱えていた自分に、もう少しだと言い聞かせるように
リビングに目をやると旦那を目が合ったが気がつかないふりをして平然を装った。
妻としても母親としても失格なのであろう。
初めの頃は、家に持ち込まないようにしていたはずなのに
玄関を開けた瞬間に夢の世界から目を覚ましていたはずなのに……
忙しい毎日に、飛翔くんの存在が途切れ途切れになってしなうこともあったはずなのに。
最近は、飛翔くんと揉め事がある度に、あたしは夢の世界からも目を覚ましはしない
むしろ、持続し続けていて周りさえ見えない。
料理の味付けは間違えるし、買い物に行っても必要なものさえ忘れてくるし
お風呂に入れば、流れる涙が止まるまで出ることができない。
一日、携帯を気にしてはボーっとしていたり……
止まらなくなってしまった、あたしの心
きっともう、飛翔くんがいない世界などあたしには考えられない……。