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「どうするの?」
二人のいる場所にもう少しで着こうとした時、香織の声が聞こえていた……
下を向き黙っている飛翔くんがこの場所からは見える
その姿を唇を噛みしめ聞きながら、あたしはそっと二人のいる席に行き腰を下ろした。
「ねぇ?どうしたいの?このまま別れるんだね」
さらに追い打ちをかけるように香織の言葉が聞こえて、あたしは香織の表情も飛翔くんの表情も見ることも出来なかったが、
おそらく強い言葉から、香織はまた怒りを募らせているに違いないと、
そして飛翔くんは下を向き続けているだろうと思った。
「どうしたらいいかわからねぇ~んだよ」
その時、やっと口を開いた飛翔くんが香織の怒りに答えるよう、大きな声でぶつけてきて
あたしはその光景をただ見つめていた
期待をしていた
“また、一緒にいたい”そう言って貰えることを
期待していたんだ……
そう、きっとこれが飛翔くんの本音。
答えなんだ
戻ったとしても、未来のないあたし達は再びもがき苦しむだろう
そして、何度も同じことを繰り返して傷を深くしていく
きっと治らないところまで、深く……
「逃げてんだよ」そう、ひとこと言うと飛翔くんの視線が突き刺さる。
そう、嫌われてしまえばいい。
一瞬で傷付けてしまえば、飛翔くんのあたしへの想いは憎しみに変わる
そして、愛という重たい荷物を下ろすこともできるだろう
ビックリした表情をしている飛翔くんをあたしは冷静に見つめ返すと
「もう時間ヤバいから行こう?」と、香織に向かって言い放った。
まるで、帰る場所があたしにはあるように、はっきりと。
「いいの?流奈」
その香織の言葉に頷くあたしは、これでいいんだと言い聞かせていた
目の前にある伝票を手に取ると、目が合って一瞬で視線を反らした。
出逢ったあの日の夜を思い出させるその寂しそうな悲しげな眼差しは、あたしの決心を鈍らせてしまうそうで……
怖い……
飛翔くんの前を淡々と歩きながら「ありがとうございました」という店員さんの言葉を振り切るようにして歩いているのは
飛翔くんの後ろ姿を見てしまったら「離れないで」と今にもしがみついてしまいそうになるからだ。
店を出て歩き出すあたし達の後ろから着いて来ているのが足音で分かる。
「車、どこに停めたの?」
そう振り返って飛翔くんに聞いてみたが、その時悲しそうな表情を見てまたしても視線を反らしてしまうあたしがいる
「あ、パーキングだよ」
「どこの?」
「コンビニの近く」
「そっか」
わざと冷たく言うと、あたしは再び歩き始め隣にいる香織に視線を移すと、香織も浮かない顔をしていた。
「じゃあ、俺はこっちだから」
その言葉に振り返り「うん、じゃあね」とそっけなく言うと再び足を進める。
振り向いてはいけないと自分に何度も何度も言い聞かせながら淡々と前だけを向いて歩き続ける。
足を止めてしまったら、振り向いてしまうだろうから
ただ、ただ、歩き続けた……