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「……か!れいかっ?」
「え?あ、なに?」
「本当にいいの?」
「うん」
本当は、離れたくない
ずっと飛翔くんの傍に居たいって今でもそう思う……
だけど、あたしのこの想いは苦しめるだけだ……
「つーか、あんな言い方ないよね。マジきれそうだった」
『流奈が初めから結婚してると分かっていたなら、俺は好きにはならなかった……』
そうはっきりと言った飛翔くんのその言葉だけが、あたしの頭の中に残り続けている
全てを否定されたかのようで苦しい
「うん」
「あんな男早く忘れちゃいなよ」
「………」
その言葉にだけはどうしても頷けなかった。
頷いてしまったら嘘をついてしまう
香織に対しても、自分に対しても……
分かっているんだ
自分だけはごまかせないということを
そして、この先もずっと飛翔くんを忘れることは無理なことだと……
「本当に大丈夫?」
「なにが~?大丈夫だよ」
「流奈がなんであんな男に本気なのか分からない、あの男だけは応援できないよ」
「えっ……?」
「だって自分ばっかじゃん、自分だけが辛いような顔してさ」
「………」
「流奈と付き合えただけでも有難いと思わなきゃだよ」
真剣にそう言ってくれる香織
きっと、あたしを思ってのことだろう……
それでもなぜだろう、心が凄く痛いんだ
「ほんとだよね~!!」
そう精一杯の作り笑いをしながら、あたし達はタクシー乗り場に向かい、来るのをひたすら待っていた。