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好きって難しい……
相手を想うことによって深く傷付けてしまうこともあるのだから
静かに目を瞑ると真夜中のこの場所は静かすぎて、どこか遠い場所に来てしまった感覚になる
この静かな世界で、何度幸せを感じたのだろう。
初めから、この場所はあたし達二人だけに用意されていたような気がしてならない
そして、この場所から一歩外へと踏み出してしまえば二人を引き離す現実が待っている
やっぱり、ここは夢の世界だったのだろう……
そう思ったりもしてみたが、実際目を開けて周りを見渡すと、飛翔くんがいないこの場所はただの行き止まりで、もはや人が好んで歩くような場所でもないことに気づく
周りから見たら、こんな遅くにこんな場所にいるあたしはきっと、おかしなヤツに見えるに違いない。
飛翔くんのいない世界は何もかもが暗黒だ
溜まっていく吸い殻を再び火をつけたタバコで転がすと、乾いたアスファルトの上に模様が作られていく
「……あたし……」
それが涙だと認めるまでに時間がかかったのは、きっと再び故障していたと思われていた涙腺が開かれたことに戸惑いがあったからだろう。
「逢いたいよ……」
溢れ出す涙は、冷たい風のせいで頬をかすかに痛めていく……
「飛翔くんに逢いたいっ……」
届かない声をあげながら、幸せな時間をいつも二人で過ごしていた秘密の場所で
あたしの涙は枯れることはなかった。